羽根守のハネブログ

羽根守が思ったことを書いていく、そんなブログです。

今日のこの一冊、ビブリオトーク【ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義】

 

 ■ ビブリオトークとは?

 

 この本を読者に読ませたいと一点のみで相手に薦めるブックレビュー。

 本を読んだ感想よりも企画色が強い本の紹介である。

 第一回目のビブリオトークは、【ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義】なり。

 

 ■ 【ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義】

 

 大学本といえば、“生協の白石さん”が有名であり、学生達の一言に丁寧に返す白石さんの人柄が学生達の心をわしづかみし、それが書籍化された本である。しかし、この本は元々、大阪大学ショセキカプロジェクトで発行されたものだ。

 大阪大学ショセキカプロジェクトとは、大阪大学出版会の協力のもと、阪大教員による魅力的な書籍づくりを学生が企画提案し、その後の広報・販売まで学生自身が全面的に関わるプロジェクトのことをさす。その企画の中で選ばれたのが『ドーナツの穴だけを残して食べる方法』であり、阪大のブレインたちがその難問に挑んだ。

 元々、『ドーナツの穴だけを残して食べる方法』はネット上でよくやり取りされるネタである。それを12人の阪大教授が切り込んだら、こうなった、いや、どうしてこんなことになってしまったんだ!? というのがこの本のテーマである。

 

 ■ この本はドーナツの穴のように見える穴ではなく、とても深い。

 

 私自身、この本を読んだキッカケはとあるウェブニュースでたまたま目にして、それが気になったので、一度読むことにした。

 

 感想として、この一言に尽きる。

 

 強引。

 ゴーインに強引。

 

 映画のラストシーンで好きでもない許嫁と結婚式を上げている教会へと入って、その花嫁をかっぱらう主人公のような強引さがある。

 連想ゲームでりんご、ゴリラ、ラッパ、パンダ、だんご、……という具合でりんごについて話しているのに、なぜかだんごについて語り出すような本である。

 

 おかしい?

 いや、ナニモオカシクナイデスヨ、ハイ。

 

 最初は物理学的、数学的方法を利用して、ドーナツの穴を残そうとするだが、だんだんとドーナツの穴を残すことよりも、『ドーナツ』と『穴』というキーワードで教授たちが専攻する学問を紹介する本へとなる。

 確かに、この本はドーナツの穴を通じて、各々の教授が受け持つ学問について話す本なのだが、読んでいくうちに、ドーナツの穴だけ残して食べる方法から、教授の専門領域へと“どうやって、話を転がそうとするか”という教授の必死さが伝わる本へとなっている。

 淡々と、得意分野の話を語られて、「ああ、そういう話もあるんだな」と、納得する。読み終わった後、ゆっくりとカフェテリアでアイスコーヒーを嗜んでいると、「いや、チガウがな!」と、本にツッコミを入れるそんな本である。

 

 ■ 穴からのぞく大学講義のタイトルは伊達ではない

 

 この本を最高に楽しんで読む方法は、「ドーナツの穴をそれぞれの学問を用いて、ドーナツの穴だけを残す方法を読み解く」のではなく、「教授たちがドーナツの穴を残して食べる方法という言葉を用いて、いかに、ドーナツの穴からかけ離れた学問の内容を紹介する大喜利ショーを楽しんで読む」ことである。

 ドーナツの穴を残して食べる方法を正当法で切り込む教授もいたり、ドーナツの穴は何のその、取り扱っている学問を紹介する簡単な大学講義をして、最後はドーナツの穴もこれに似ているで落とす、上方落語かというツッコミを入れる話もある。

 あくまで、これは学問入門書であり、真剣にドーナツを穴だけ残して食べる方法を提示していない。(一応、納得できたのはトポロジーを使った方法だが、トポロジーを知らない人間が読んだら、ありかよ、というツッコミが入るはず)本気で、ドーナツを穴だけ残して食べる方法を期待して読んだら、裏切られる。そんな本だ。

 個人的には教授たちが専攻している学問を紹介する“強引さ”を楽しんで読んで欲しい。偉い人はこうやって話を煙に巻く方法もわかってけっこう楽しめる。

 小難しい学問入門書ではなく、トリビアの泉を見るように読むユーモア学問入門書としてオススメの一冊だ。

 

 ■ 私が考える『ドーナツを穴だけ残して食べる方法』

 

 さて、この本を読んで、私自身、ドーナツを穴だけ残した食べる方法を見つけた。

 

 1.まず、ドーナツの外周を食べます。

 2.次に、ドーナツを縦に切ります。

 3.これでドーナツは消滅し、半ドーナツとなりました。しかし、ドーナツの穴は2つ残せました。

 

 おい、これはドーナツも存在しているじゃない! という声があるはずだと思う。

 しかし、ドーナツは縦に半分切ったことで半ドーナツとなり、ドーナツであったものは半ドーナツへと変わってしまった。また、命題の大前提となっているドーナツの穴は維持している。

 半ドーナツは元のドーナツではない。だが、元のドーナツの穴は存在している。

 ドーナツであったものは消滅したが、ドーナツの穴を確保しており、加えて、ドーナツを食べたという行動もこなしている。

 これで、ドーナツを穴だけ残して食べる難問は無事クリアしたのだ。

 

 ただし、ドーナツの穴の深長は半分になっているので、正確にはこの穴は半ドーナツの穴ではないかという指摘がある。ドーナツの素材が残っているので、ドーナツの穴だけ残さず、食べ切れたとは言えない。

 

  そういうツッコミが絶対あると思う。

 

 はい。

 この本は学術的なウンチクがなければ、そういうツッコミが自然と出てくるとんち本です。

 はい。

 

ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義

ドーナツを穴だけ残して食べる方法 越境する学問―穴からのぞく大学講義